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愛育病院 安念先生の小児向けAKデータ

日本小児皮膚科学会雑誌
第17巻 第1号 1998年5月

ビオセラミドLS含有ローションの使用経験
-- 小児のアトピー性皮膚炎に対する有用性 --

総合母子保健センター愛育病院 皮膚科
安念 美雪・山本 一哉

Miyuki ANNEN・Kazuya YAMAMOTO

Bioceramides LS lotion was used in aid of combined treatment with drugs in 24 pediatric patients mainly with atopic dermatitis. From the clinical results of there cases, the lotion was evaluated as an useful and safe skin care product.

Key Words: アトピー性皮膚炎 atopic dermatitis, スキンケア skin care, ビオセラミド LS 含有ローション,bioceramides LS-lotion

はじめに

アトピー性皮膚炎では,ドライスキンを呈することが多く,そのため皮膚バリア機能異常が,主な病因のひとつとされている (文献1)。
その機序としては,近年,角層間脂質(セラミド)が減少しているのが主因とされている (文献2)。その結果、アレルゲンなどの侵入を許し、本症の発症・悪化につながることになる。
一方、元来小児では、成人に比べ皮脂が少ないこともあり、スキンケア製品としてのセラミド、あるいは類似物質の外用は有用であると思われる (文献3~5)。
我々は、アトピー性皮膚炎患者、および皮脂欠乏性湿疹患者に対してビオセラミドLS含有ローション外用を行い、良好な結果を得たのでここに報告する。

 

対象および方法

1) 対象
1997年9月26日から12月24日までの間に、愛育病院皮膚科外来を受診した、1歳から13歳までの軽症から中等症のアトピー性皮膚炎患者23名(男子10名、女子13名)および生後2ヵ月の皮脂欠乏性湿疹の男子1名を対象とした(表1)。

2) 試験試料
下記のように、ビオセラミドLSを含有するローション(AKマイルドミルクローションこども用)を、ロゼット株式会社より提供を受けて使用した。

  • ビオセラミドLS 0.50(w/w%)
  • 濃グリセリン   5.00(w/w%)

3) 使用方法
上記24名に対し、使用開始まで用いていた他のスキンケア製品の使用を禁じ、試験試料を皮膚乾燥部を含め、顔面・体幹・四肢に1日2回(起床時、入浴後)外用させた。
症状の著しい部位には、症状に応じた薬剤(主としてステロイド剤)を併用した。


10月18日 開始前

11月5日 終了時 (No.7: 2月 男子)

11月5日 開始時

12月3日 終了時 (No.16: 13歳 女子)

 

(表1) ビオセラミドLS含有ローション使用成績

No.    年齢・性別 疾患名 全般改善度 有用性 副作用  
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
T.S
M.O
K.S
W.F
T.M
C.S
K.N
Y.K
H.S
Y.M
T.K
Y.N
K.N
S.K
Y.T
J.T
N.M
Y.S
A.S
A.K
S.M
M.M
I.Y
K.O
1歳・女
1歳10ヵ月・女
4歳・男
5歳・男
1歳9ヵ月・男
1歳7ヵ月・男
2ヵ月・男
3歳・男
6歳・女
2歳4ヵ月・女
2歳1ヵ月・男
5歳・女
5歳・女
1歳・女
2歳5ヵ月・男
13歳・女
2歳4ヵ月・女
2歳1ヵ月・女
13歳・女
7歳・男
8歳・男
5歳・女
4歳・女
2歳2ヵ月・男
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
皮脂欠乏性湿疹
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
かなり軽快
かなり軽快
著しく軽快

やや軽快
かなり軽快
著しく軽快
やや軽快
やや軽快
やや軽快
やや軽快

かなり軽快

かなり軽快
かなり軽快
著しく軽快
かなり軽快
やや軽快
かなり軽快

かなり軽快
やや軽快
有用
有用
きわめて有用

有用
有用
きわめて有用
有用
やや有用
やや有用
やや有用

有用

有用
有用
有用
有用
有用
有用

有用
有用























 


脱落例







脱落例

脱落例






脱落例


脱落例

4) 患者の同意
使用開始前に、口頭で、保護者および可能な例では本人の同意も得た。

5) 評価方法
皮膚所見については、ソウ痒・乾燥・落屑・紅斑・浸潤・肥厚苔癬化の6項目について、試験開始前および試料使用後4週後に、下記の5段階で判定した。

0:無し 1:軽微 2:軽度 3:中等度 4:高度

全般改善度については,各皮膚所見を総合して試験開始前と比較し,下記の6段階で評価した。

0:不変 +やや軽快 ++:かなり軽快 +++:著しく軽快 ++++:治癒 ×:悪化

副反応については,下記の4段階で評価し,その過程を記載することにした。

0:なし 1:軽度 2:中等度 3:高度

有用性は全般改善度,副反応,併用薬剤を総合的に考慮し下記の5段階で評価した。

1:きわめて有用 2:有用 3:やや有用 4:無用 5:有害

試験を中止した場合は中止理由を記載することにした。

6) 機器測定
アトピー性皮膚炎16例、小児乾燥性湿疹1例の計17例に対し角層水分量および皮脂量の測定を行った。
試験開始前および試験終了時の2回,顔面頬部,肘窩を測定した。

角層水分量: コルネオメーター CM820PC(Courage+Khazaka Electronic GmbH)を用い、角層水分量の指標となる静電容量測定(測定値は機器表示数値を示した)を行った。
皮脂量: セブメーターSM810(Courage+Khazaka Electronic GmbH)を用い、皮脂量を測定した。

7) 写真撮影
症状の著しい部位を、使用開始前後で比較した。撮影はビデオルーペVL-7(Scalar)を用い、30倍レンズで行った。

8) アンケート調査
別紙のようなアンケート調査を施行した(図1)。すなわち,使用開始時に保護者に手渡し、試験終了時に記入の上、回答させた。

アンケートのお願い

今後の参考にさせて頂くために、「AKマイルドミルクローション・こども用」につきましてお尋ねします。

製品を使用されました結果、該当する項目に◯をつけてください。

1. 肌へのなじみ 良い 普通 悪い
2. べたつき感 あり 普通 ない
3. しっとり感 あり 普通 ない
4. さっぱり感 あり 普通 ない
5. 全体的な使用感 良い 普通 悪い
6. 今後も使用したいですか はい わからない いいえ
7. 今までに市販の保湿剤を使用したことがありますか ある わからない ない

 

お子さんの名前 記入年月日 平成101010
記入者の名前と続柄 父親、 母親、 その他(.................................)

どうもご協力ありがとうございました。


(図1)

結果

1) 使用成績
脱落例を除くアトピー性皮膚炎患者18名、皮脂欠乏性湿疹患者1名に対しビオセラミドLS含有ローションを使用した結果は、表1のごとくであった。アトピー性皮膚炎患者に対しては、全般改善度で、かなり改善以上は61%を示した。有用性では、有効以上の者は18名中15名(83%)を占めた。
皮脂欠乏性湿疹はわずか1名であるが、ビオセラミドLS含有ローションと白色軟膏の併用のみで、ステロイド剤を使用することなく、全般改善度は著しく改善し、きわめて有用と判定された。副反応は、全例に認められなかった。

なお、試験実施例24名中、1名は水痘罹患のため試験を中止した。他の4名はその後来院しなかった。これらの5名は脱落例とした。

2) 機器測定結果
アトピー性皮膚炎患者16名、皮脂欠乏性疾患患者1名に対する試験開始前および終了時の角層水分量の変化を図2に示した。角層水分量では、9月から12月へ向けて季節の変動に伴いdryへ移行する傾向がみられたが、個々の数値の上では、顕著なレベルの移行はみられなかった。
数値15以上大きく改善したものは3例であるが、うち2例では臨床的にも改善が認められている。
皮脂量では、対象が小児であることもあり、測定値には変化がほとんど認められなかった。 (文献3)

なお、前記、改善の認められた2例の使用前後の変化を示しておくことにする。 (冒頭カラー写真4点 参照)


(図2) 角層水分量の変化

 

3) アンケート調査
アンケート調査のまとめを図3に示した。肌へのなじみ、使用感で良好な結果が得られた。



(図3) アンケート調査結果

 

考えとまとめ

ビオセラミドLSのアトピー性皮膚炎患者用スキンケア製品としての可能性については、山本らにより、すでに報告されている (文献4)。その後、市橋らによりアトピー性皮膚炎に対するビオセラミド含有外用剤の有効性を高く評価した臨床成績が発表されている(文献6)。
すでに、セラミドないしは類似物質による皮膚バリア機能の改善がアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効なことは明らかである。今回使用した製品は、含有される有効成分からも、それによるアトピー性皮膚炎ないしはいわゆるドライスキンの症状改善が当然期待されるところである。使用した結果も、正しくその通りであった。

アトピー性皮膚炎および皮脂欠乏性湿疹など、皮膚バリア機能不全が病因と考えられる疾患の治療には、副腎皮質ステロイド含有外用剤が汎用される。一方、いろいろな原因で、その副反応が生じないとは言い切れないのも実情である。このような状況では、アトピー性皮膚炎発症の主因とも思われる皮膚バリア機能の改善効果が明らかなスキンケア製品の併用により、治療効果が高められ、かつ外用ステロイド剤による副反応の発現が予防されることが望ましい。今回使用したスキンケア製品は、それに相当するものであると言えよう。

文献
1) 川島忠興:角層の形態学的調査法-小児アトピー性皮膚炎患者の角層検査所見を中心に-、日小皮会誌、12:135~141、1993。
2) 芋川玄爾:どうしてかさかさするの。ibid,16:87~99 1997。
3) 桑原千裕他:小児における皮脂量および角質水分量、ibid,11:27~32、1992。
4) 山本一哉、佐々木りか子:ビオセラミド(BIOCERAMIDES LS3773)含有軟膏の使用経験--アトピー性皮膚炎患者用スキンケア製品としての可能性について--、ibid,15:67~69、1996。
5) 安念美雪他:乳精ミネラル(MWS)配合ベビー用スキンケア製品の使用経験--アトピー性皮膚炎患者に対する治療補助効果の検討--、ibid, 15:242~247、1996。
6) 市橋正光、堀川達弥、高島 務:アトピー性皮膚炎に対するセラミド含有外用剤の効果のついて、第21回日本小児皮膚科学会、笹川記念会館、東京、1997年5月31日。